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 前向きな主人公の姿に共感 
「耳をすませば」



タイトル: 耳をすませば
原題: 耳をすませば
(1995年、日)

監督: 近藤喜文
出演(声): 本名陽子、高橋一生、立花隆、室井滋、露口茂、小林桂樹 他





 この夏公開予定のスタジオジブリの新作、「猫の恩返し」。これは95年に
公開された「耳をすませば」の姉妹編になるそうです。というわけで、今回紹
介するのはこれ、「耳をすませば」です。
 主人公は本好きな中学生、月島雫(しずく)。この作品は、思春期の女の子
の将来に対する不安や焦り、そして淡い恋心を丁寧に描いています。

 自分は何をしたいのか、自分に何ができるのか――。
 大抵の人は、自然と湧き上がってくるこの心の声、問いかけに対して耳をふ
さいで、なんとなく毎日を過ごしてしまう。
 「それを見つけるために大学行ってんの」という雫の姉のセリフは、ある意
味、多くの人の胸の内を代弁しているのかもしれません。

 雫も、夢に向かってつき進む天沢聖司の姿を見てはじめて、何も考えていな
かった自分に気が付き、思い悩む。誰もが経験する人生の壁。しかし雫は、聖
司への強い想いから、自分のやりたかったこと、物語を書く夢に向かって、そ
の小さな1歩を踏み出す。もちろん、すんなり夢がかなうほど、人生甘いもん
じゃない。それでも、一生懸命頑張っている雫の姿を見ると、やっぱり胸がジ
ーンと熱くなるのです。
 私がこれを観たのは、すっかりサラリーマン色に染まっていた20代の頃。
スクリーンに映しだされた月島雫の中に昔の自分を見つけ、私は泣きました。

 原作は柊あおいの同名少女マンガ。そう聞くとそれだけで拒否反応をおこし
てしまう人もいるようですが、この映画は、宮崎駿氏の脚本と、故・近藤喜文
監督の巧みな演出で、リアルで生き生きとしたヒューマンドラマに仕上がって
います。観終わった後にちょっと前向きな気持ちになれる、そんな素敵な映画
です。

 それから、なんといっても素晴らしいのは映像や音に対するこだわり。特に
前半の山場にあたる演奏シーンは絶品です。
 バイオリンを弾いてくれと懇願する雫に、聖司は答える。
 「よし、その代わりお前歌えよ!」
 「え?? ダ、ダメよ! 私、音痴だもん」
 お構いなく弾き始める聖司。曲はカントリーロード。仕方なく歌いはじめる
雫。ちょうどそこに、聖司のおじいさんと音楽仲間が帰ってきて、演奏に加わ
る。
 バイオリンとコーラスから始まった演奏が、やがてタンバリンが加わり、チェ
ロが加わり、リュートやリコーダーが加わり、本格的な室内管弦楽のように変
化していく。これを、邦画初のドルビーデジタルでやったもんだから、劇場で
は音が四方から迫ってくるかのような、ものスゴイ臨場感!! 観ていて背筋
がゾクゾクしたのを覚えてます。
 結局、劇場には2度足を運びましたが、もう1度上映されることがあれば、
このシーンのためだけに行ってもいいくらいです。どこかでジブリ特集でもし
ないかな?



  Text by じょん 2002/6/11  メールマガジン掲載




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