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 せつないけど、あたたかい 
「ギルバート・グレイプ」



タイトル: ギルバート・グレイプ
原題: What's eating Gilbert Grape
(1993年、米)

監督: ラッセ・ハルストレム
出演: ジョニー・デップ、レオナルド・ディカプリオ、ジュリエット・ルイス、メアリー・スティーンバーゲン 他





 「サイダー・ハウス・ルール」(99年)、「ショコラ」(00年)、「シ
ッピング・ニュース」(公開中)など、一貫してハートフルな作品を撮り続け
ているラッセ・ハルストレム監督の、ハリウッド進出第一作。ジョニー・デッ
プやレオナルド・ディカプリオの好演が光る、せつなくて、美しくて、そして
心あたたまるヒューマンドラマです。

 アイオワ州の田舎町に住む青年、ギルバート・グレイプ(ジョニー・デップ)。
過食症の母と、知的障害を持つ弟アーニー(レオナルド・ディカプリオ)の面
倒を見ながら、淡々と暮らす毎日。ある日、彼はキャンピング・カーで旅をし
ている女性ベッキー(ジュリエット・ルイス)と知り合う。自由に生きる彼女
との出会いは、ギルバートの心に微妙な変化をもたらしていく――。

 この映画は本当にせつない。
 ふとしたセリフや態度に見え隠れする、ギルバートの家族に対する苛立ち。
そして、そんな感情を抑えて家族の面倒をみる、悲しいほどの優しさ。
 もちろん、彼は嫌々家族と向き合っているわけではありません。むしろ、心
から家族を愛している。自分のことなど、どうでもいいのです。
 家族を想う気持ちというのは、理屈ではないんですよね。独身のときに初め
て観たときよりも、家族を持ってから観返したときの方が、はるかにグッとき
たように思います。

 障害者を扱う映画というのは、ともすると重くなりがちですが、この作品が
巧妙なのは、さりげなくユーモアを交えて微妙にバランスをとっているところ。
人の死を扱う葬儀屋の友人が能天気なのも、なかなか面白いアイデアです。

 また、脇を固める登場人物の描き方も素晴らしい。特に、ギルバートと不倫
の仲にある中年女性とその亭主の描き方は絶妙。幸せな家庭を築きながらも、
どこかに逃げ場をもとめる彼女と、不倫に気付きながらも、家族を愛そうとす
る亭主。人の悲しさやはかなさを、ほろ苦く描き出しています。

 物語の最後、母を愛するがゆえにギルバートがとった驚くべき行動。それが
結果的に、母や父、そして家の束縛から彼を解放し、彼に自由をもたらす。
 なんとも皮肉で悲しい結末ではあるのですが、ラストでキャンピングカーを
待つギルバートの目は、大いなる自由への期待と希望で輝いています。

 せつないけどあたたかい。そんな素敵な映画です。



  Text by じょん 2002/4/5  メールマガジン掲載




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