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W杯サッカーで日本がロシア相手に歴史的な初勝利を飾った日、公開中の話
題作「少林サッカー」(チャウ・シンチー監督・主演)を観に行った。
主人公・シンは少林寺拳法を世に広めようとしている青年。開巻まもなく、
彼がサッカーのコーチ・ファンに少林寺拳法の効能をアピールするシーンがあ
る。
シンは街なかを見回し、バナナの皮ですべって転んだ女性を見ては「少林拳
を習っていれば転ばずにすんだ」、縦列駐車ができなくて困っている女性を見
ては「少林拳を習っていれば、縦列駐車もラクラク」などとトボけたことを言
う。
さらに、仕事が遅いせいでクビになった植木職人を見てひと言。
「彼も『独孤九剣』を習得していれば、クビになることはなかった」
華麗な剣技で見る間に植木を刈り込んでいく植木職人の姿を頭に思い描くシ
ン。
これを聞いていたファンが
「『独孤九剣』は少林拳じゃなくて華山派だろ」
と突っ込むと、シンは「ま、それはともかく」とばかりにスバヤク話をそら
してしまう。
何てことない会話なので特に注意せずに聞き逃した人も多かったかもしれな
いけど、私はこれを聞いてちょっとニヤリとした。
「独孤九剣」というのは香港の国民的作家・金庸の小説「秘曲 笑傲江湖」
(徳間書店、全6巻)で主人公・令狐冲が習得する剣法の名前。コレ、私の大
好きな小説なのだ。「スウォーズ・マン」シリーズとして映画化もされている。
「独孤九剣」には全部で9つの型があり、それがさまざまに結びついて無限
に変化を繰り返すという。――と聞いただけで強そうでしょう。
華山派の門弟である令孤冲は、同門の長老に授けられた「独孤九剣」によっ
て武林(ま、平たく言えば武術界ってとこか)屈指の使い手となる。
武林は少林寺を頂点とした「正派」と、超人的拳法家・東方不敗に独裁支配
された「魔教」とに二分され、長年にわたって抗争を繰り返している。令狐冲
が属する華山派も正派の名門流派の一つである。
当然、クライマックスは令狐冲と東方不敗の対決、と想像するのがフツーだ
ろう。しかし、この小説の脱線に脱線を重ねる意外なストーリー展開は、そん
なありがちなヤマ場では収まらないくらいスゴいのである。東方不敗との対決
の後にはさらにスゴいクライマックスが待っている。
ついつい「どうやって収拾つけんだよ、オイ?」と心配しちゃうくらいなの
だが、ラストは見事にアクロバット的着地。面白すぎる。
この小説を読んだおかげで中国武術に対する造詣(?)も深くなった。「グ
リーン・デスティニー」(00年、中/米/台、アン・リー監督)を観たとき
にも、ワイヤーアクションでフワフワ飛び交う登場人物に「なんじゃあ!こりゃ
あ??」などとは微塵も思わず、「オッ、なかなかの軽功ですな」とつぶやい
てニヤリとしていた私。
そんなオレって、もしかして・・・ヲタク?
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| Text by 輝 |
2002/6/23 メールマガジン掲載 |
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