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| ニッポンの正月映画、定番はやっぱコレ!? |
| 「男はつらいよ」シリーズとわたくし |
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主演の渥美清が亡くなるまでは、毎年正月に公開されていた「男はつらいよ」
シリーズ。俳句の季語にしてもいいくらいの定番映画であるが、なんとなく敬
遠している人も多いのではないかと思う。私もそうだった。
私は子どものころ、渥美清の顔が嫌いだった。
SF映画が大好きだった私には、渥美清の顔はあまりにも日本人的で生活感
にあふれていて、ロマンのカケラもないように見えた。当時、「男はつらいよ」
シリーズはすでに何十本も製作されていたが、まったく興味がなく、一度も観
たことがなかった(「男はつらいよ」が大好きな小学生というのもあんまりい
ないと思うが)。ただ、「柴又に帰ってきた寅さんがマドンナにフラれ、また
旅に出て行く」という基本ストーリーは何となく知っていて、マンネリの代名
詞のように思っていた。
初めて「男はつらいよ」シリーズを見たのは、20歳を過ぎてからだったと
思う。渥美清はまだ生きていて、シリーズも製作され続けていたころだ。今と
なっては何作目だったのかもよく覚えていない。家で一人で酒を飲んで酔っ払
っていて、ほかに面白そうなテレビ番組もなかったので、特に期待もせずに何
となくながめていた。
私はどちらかと言うと、酔うとノリがよくなるタイプである。そのせいかも
しれないが、寅さんがよりかかった障子がスーッと動いてコケる、そんな古典
的なギャグにいちいち反応して笑ってしまっていた。そしてラスト、マドンナ
にフラれて「とらや」を飛び出す寅さんの姿に、思わず目頭を熱くしていたの
であった。
酒の影響を割り引いて考えても、「男はつらいよ」はけっこう面白い気がし
た。以後、シリーズがテレビ放映されると、時々はチャンネルを合わせるよう
になった。
何しろ全部で48作も作られているのだから、確かに当たりハズレはある。
しかし、総じて意外にいいのだ、これが。渥美清のセリフ回しの良さはよく指
摘されているが、ちょっとした体の動きも軽やかで、観ていて気持ちがいい。
カニのような顔はだんだんと気にならなくなっていた。
渥美清が亡くなった時には、いくつかの松竹系映画館が追悼上映をやったの
で、何度か足を運んだ。場内はまるで老人ホーム。ジイさんバアさんの中にポ
ツポツとほんの数人、映画マニアの大学生風が混じって平均年齢をわずかに下
げている――そんな感じだった。映画館の中で、タッパーに入った浅漬けをポ
リポリやっているバアさんが何人かいたのはちょっとカルチャーショックだっ
た。
映画が始まると、熱心にスクリーンを見ているジイさんバアさんたちは、渥
美清が何もしてなくても、ただ画面に顔を出しただけでクスクス笑っていた。
すごい。昔は嫌いだったあの顔の真のパワーを思い知った瞬間であった。
「男はつらいよ」をあなどってはいけない。そう思った。
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| Text by 輝 |
2002/1/12 メールマガジン掲載 |
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