映画 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地黎明
映画 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地黎明 レビューと感想
1日(土)から公開中のツイ・ハーク監督『セブンソード』を観た。
中国・清朝初期。運命に導かれるようにして集まった7人の剣士が、賞金めあてに人狩りをくりかえす武装集団と戦う。
同じ中国武侠アクションということで、宣伝では『HERO』『LOVERS』が引き合いに出されているが、テイストはずいぶんちがう。そもそも監督がちがうんだし、あたりまえなんだけど。
『HERO』『LOVERS』の様式美っぽいアクションにくらべ、『セブンソード』のアクションは、もっと荒々しく、激しく、速い。
――というか、荒々しすぎる、激しすぎる、速すぎる。なんせ、観客が目で追いきれないくらいなのだ。
誰と誰が斬り合っているのか、どういう技を使っているのか、よくわからないうちにいつのまにか敵が倒れてたり。
まあカッコイイことはカッコイイんだけど、なんだかよくわからない。
わかりにくいのはアクションだけではない。ストーリーにも独特の飛躍があって、いったい何がどうなっているのか、理解するのにもひと苦労。
さらにいえば、上映時間は約2時間半の長丁場。
すっかりつかれてしまった。
しかし、それでもなお「つまらなかった」の一言で切って捨てる気にはなれない。
なにしろ、あの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』(以下、『ワンチャイ』)シリーズのツイ・ハーク監督作品なのだ。しかも、武侠アクション大作。それがイマイチだなんて、信じられない信じたくない!というのが本音。
それほど『ワンチャイ』シリーズは、わたしのハートにジャストミート!だったんである。
シリーズ通しての主人公は、実在の拳法家ウォン・フェイフォン(黄飛鴻)。
フェイフォンは1847年広東省に生まれ、清朝滅亡後の1924年まで生きた。その活躍はさまざまに脚色され、小説や映画のヒーローとして中国では誰もが知る存在らしい。
日本でいえば、水戸黄門とか清水次郎長みたいな感じだろうか。
ちなみにジャッキー・チェンの『酔拳』『酔拳2』も、若き日のフェイフォンの活躍を描いた作品だ。
さて、『ワンチャイ』シリーズでツイ・ハークが監督したのは『天地黎明』『天地大乱』『天地争覇』の3本。今回はとりあえずシリーズ第1作『天地黎明』を紹介したい。
フェイフォンは清朝・黒旗軍の武術師範をつとめる高名な拳法家にして漢方医。世の人びとの信望を集めている。
当時の清朝政府は英米と不平等条約を結ばされており、国を思うフェイフォンはひそかに胸を痛めている。
そんなフェイフォンが戦うことになるのは、街のゴロツキ集団「沙河」や、中国人の善男善女をだまして奴隷にしている米国の悪徳商人、そして「沙河」の用心棒となった拳法家・イム。
すばやく変幻自在なフェイフォンの絶技の数々。アクションは目にもとまらぬ速さだが、『セブンソード』よりもずっと見やすく、わかりやすい。これならわたしの動体視力でもノレる。
ジャンル的にはまあいわゆるカンフー映画である。
カンフー映画には、アクション以外の部分がおざなりなものも多いが、この映画はちがう。セットや衣装はじつによくできているし、人間ドラマのほうもけっこうしっかりしている。
フェイフォンと弟子たちとのきずなや、親戚の女性・イーとの淡い恋が前半でしっかりと描きこまれているからこそ、戦いの中でそれらが試されるクライマックスが盛り上がるのだ。
そして、フェイフォンに倒される拳法家・イム。こいつがイイ。単なるワルモノではない。
イムは気の遠くなるような修行を積み重ね、超人的な肉体を手に入れた拳法家。しかし、近代化が進む時代の波に取り残され、拳技を見世物にしてわずかな日銭をかせぐ毎日。ばくだいな報酬に目がくらみ、ついついゴロツキの用心棒に身を落としてしまう。
「まずは成功するのが先だ。それから正しいことをすればいい」
イムの言葉にはそれなりに説得力がある。弟子たちにしたわれ、世間の尊敬を集めるフェイフォンへの屈折した感情というのも非常によく理解できる。
フェイフォンにやぶれ、死に際に発するひと言もいい。不器用で無骨な男の生きざまがしみじみと胸に迫る。せつないのう。
『セブンソード』で初めてツイ・ハーク作品にふれた人(とくにアクションにそれほど興味とコダワリがない人)は、「このカントク、もういいや」と思ってしまったかもしれないが、まあそう言わないで、ほかの作品も試してみてちょうだい。
Text by 輝
2005/10/6
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