映画 シンデレラマン
映画 シンデレラマン レビューと感想
この作品、じつは観に行くつもりはなかった。
だってさ、ちょっと予告編を見てちょうだいよ。
「実話に基づく物語 大切なものを守るために 奇跡を起こした男がいた」
「彼は夫 彼は父 彼は元ボクサー」
まずはこんな字幕。続いて、不況で仕事にあぶれたらしい主人公のうらぶれた姿。
ビンボーを絵に描いたような部屋で「子どもたちを預けないと・・・」と妻。
これに対し、主人公は幼い息子の目をじっとのぞきこみ、
「約束するよ。どこへもやらない」
とキッパリ。
何のために戦うの、と問われて、
「人生を変えられると信じたいんだ」
と主人公。
ボクシングの試合。マネージャーらしき男がリングサイドで、
「子どもたちのために戦え!」
と檄をとばす。
無謀な試合に挑む主人公を応援する群衆。
「いま、だれもがかれに勇気をもらっています」
と、ラジオかなんかのアナウンス。
妻が主人公を抱きしめ、
「あなたはみんなの希望だけれど、わたしの一番大切な人」
歓声をあげる観客。子どもたち。妻。笑顔。涙・・・。
――映画を観なくても、予告編だけでもうわかった気になっちゃう。そんな気がしちゃって。
しかも、わたしは主演のラッセル・クロウも、妻役のレネー・ゼルウィガーも、あんまり好きじゃない。(ファンのかた、ゴメン!)
だもんで、この映画は観ないつもりだった。
しかし、たまたまヒマで「映画でも観っか」てな気分のときに、たまたま上映時間がピッタリで。
「ま、いっか。これで」
そんなていどの気持ちで映画館に足をふみいれたわけである。
実際、映画が始まってみるとやっぱり思った通りのストーリー展開。意外性はまったくない。だが、しかし。
カンドーしてしまったのである。
ラッセルやレネーの演技で泣くものか(ファンのかた、ゴメン!)、と心の中で抵抗したが、あえなくねじふせられた。
涙ボロボロ。鼻がつまって息ハアハア。
これはすごいことだ。考えてもみてほしい。
「次はきっとこうくるぞ」なんてことばかり考えているヒネた観客(わたしのことだ)に対し、その予想通りのものを提示しながら、それでも泣かせてしまうことが、いかに大変な作業であるか。
わたしは映画をつくったことがないので(当たり前だ)作り手側の気持ちは想像するしかないのだが、たぶん、「観客の予想を超えたい」「驚かせたい」という気持ちは強いのではないかと思う(で、ヒネりにヒネったあげく、フツーの観客には何がなんだかわからない映画になっちゃったりとか、ね)。
『シンデレラマン』は、そういう野心をぐっとおさえて、当たり前の物語をていねいにていねいに織り上げている。そこがエライ。
ひょっとしたら映画マニアにとっては物足りない作品かもしれない。しかし、これは世の中の大多数を占めるフツーの人びとのための映画なのだ。だから、これでいいのだ。
逆に、この手の作品がなくなってしまうようなことがあったら、もう映画は終わりだと思う。
Text by 輝
2005/9/29
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