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亡き妻の肖像〜魂が棲む画



タイトル: 亡き妻の肖像〜魂が棲む画
原題: Vanessa in the Garden
(85年、米)

監督: クリント・イーストウッド
出演: ハーヴェイ・カイテル、ソンドラ・ロック、ボー・ブリッジス 他




レビュー&コメント

 夏といえば、怪談である。

 『東海道四谷怪談』(59年、中川信夫監督)。日本恐怖映画の歴史的傑作
と言われている作品だ。今から10年以上前、大学生時代にこの作品をビデオ
で観た。 最初は寝転がって観ていた私だが、格調高い映像に思わず居住まい
をただした。これは力作だぞ、と期待が高まる。しかし――。

 肝心のクライマックス、お岩の幽霊が登場する場面になると、私の興奮は一
気に冷めてしまった。いや、作品が悪いのではない。原因はこちらにある。

 お岩さんが出てくるシーンには必ず「♪ヒュ〜ドロドロドロ」という効果音
がついている。私と同じくらいの世代の方ならわかってくださると思うが、こ
れはドリフのコントで幽霊が出てくるときの定番である。志村けんや加藤茶が
「ウッヒャー!!」と悲鳴を上げている場面が鮮明に頭に浮かぶ。
 画面ではグシャグシャに顔がくずれたお岩の幽霊が懸命にがんばっているの
であるが、どうしてもドリフが頭から離れない。雰囲気ブチこわしになってし
まった。

 この作品の製作年である1959年には「♪ヒュ〜ドロドロドロ」は本当に
恐い音だったのだろうが、私が観るまでの30年間で繰り返し使われているう
ちにすっかり手アカがついて、とうとうお笑いのネタになってしまったのであ
ろう。いかな名作も時代の波からは逃れられないのである。
 『リング』(98年)の<貞子>なんかもよくパロディのネタにされている
が、あんなに恐かった<貞子>も、30年後の子どもたちは笑いながら観るよ
うになってしまうのだろうか。フクザツな気分だ・・・。

 怪談話には、ひたすら恐怖を追求するホラーだけでなく、オチの面白さで最
後にちょっとゾクッとさせる<上手い話>というのもある。恐さという面では
それほどでもないかもしれないが、この手の作品のほうが寿命は長いのかもし
れない。

 今回はそんなしゃれたゴーストストーリーを紹介したい。『亡き妻の肖像〜
魂が棲む画』である。スピルバーグが製作したテレビシリーズ『世にも不思議
なアメージング・ストーリー』の一編で、厳密に言うと映画ではないのだが・
・・。日本では92年にテレビ放映された。

 最愛の妻(ソンドラ・ロック)を亡くした画家、バイロン(ハーヴェイ・カ
イテル)が主人公。一時は失意のどん底に落ち込むが、ふとしたことから、自
分の絵に妻の魂を呼び戻す不思議な力があることに気づく。バイロンは何かに
とりつかれたように妻の肖像画を描き続けるが・・・というストーリー。そん
なに恐いシーンはない。むしろ、静かで落ち着いた作風だったと記憶している。
人によっては退屈に感じるかもしれない。

 しかし、途中で観るのをやめてはいけない。最後の最後、ラストのワンカッ
トにあざやかなオチが用意されているからである。

 どんでん返しがある、という意味ではない。ちょっとしたことなのだが、そ
れまでにはあまり見かけたことがない種類の<仕掛け>がピタリとキマる。怪
談話のオチとしては意外なほどに、粋でオシャレな結末。拍手パチパチもんの
あざやかさである。

 こういうお見事!なオチを目にすると、感心しているうちにいつの間にか暑
さも忘れてしまう。――やっぱ、夏といえば、怪談、ですねえ。



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  Text by 輝 2003/7/18  メールマガジン掲載
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